『ヘビーレイン』を手掛けたQuantic Dreamによる、映画とゲームを融合した作品。美麗なグラフィックと精巧なキャラクターモーションで、ハリウッド俳優の演技が再現されています。
2013年10月にPS3用ソフトとして発売。2020年6月にsteam版が発売されました。
ロマンス、ヒューマンドラマ、オカルトホラー、超常現象、アクション、潜入スパイと色んな要素が詰め込まれています。
「生」と「死」がテーマになっており、主人公ジョディの過酷な人生を追体験するので、精神的に落ち込んでいる時にプレイすると、より落ち込む可能性がありますのでご注意を……。
クリア時間は約10時間でした。
まさに映画をプレイしているような体験が可能ですが、私には合わないと思いました。
ゲームプレイより映画的な画面作りを優先しており、カメラ操作はほぼ固定で「脚本通りに真っすぐ動いてください」と強制されているような感覚に陥ります。操作キャラを切り替えないとカメラが動かせなくてガッカリしました。
一部の選択肢で、少し考えていたら勝手に主人公が返答してしまい、脚本優先で勝手に進んでいく様を見せられているように感じました。なら選択肢出す必要ないだろ!?ってなります。
かといって一本道ゲーではないんです。選択肢やQTEの成功・失敗で展開が変わりますし、エンディングも複数あります。
むしろ、一本道ゲーの方がストーリーに集中できたかもしれません。ゲームオーバーが無いので、QTEに失敗しても一部のイベントがスキップされるだけでストーリー進行にあまり影響しません。だったら分岐を設けずに最初から一本道でもよかったんじゃないかと思ってしまうんです。
以下、⚠ネタバレ全開の感想文です。未プレイの方はご注意ください!
「プレイする映画」が自分に合わなかった理由
プレイ動画だと簡単そうに見えるけど、実際にプレイすると操作性のクセがすごいんですよ。
レターボックス、極限まで削ぎ落されたUI
映画のようにレターボックス(上下の黒い帯)があって視野が狭い上に、画面がぐわんぐわん揺れる演出がとても多くて、3D酔いしやすいです。
ジョディ操作でアクション可能なオブジェクトには白い点のみ表示されるなど、ゲーム的な視覚情報は最小限になっています。白い点の所でどんな操作をすればいいのか非常に分かりづらいです。私は『ヘビーレイン』プレイ済みなので何となく分かりましたが、Quantic Dreamのゲームをプレイしたことがない方は困惑するのではないでしょうか。
アクションシーンのQTEではジョディの動きに合わせてマウスを動かします。例えば、ジョディが左に避けようとしているなら、マウスを左に。ジョディが障害物をジャンプしようとしているなら、マウスを上に動かします。
最初は全く分からなくて、チュートリアルが失敗続きで進みませんでした😅
特に難しかったのは、ジョディが人を押しのけようとしている時でした。プレイヤーは咄嗟に人を避けようとしてしまうんだけど、ジョディは押す動きをしているから真逆なんですよね。むずい!
難易度を「カジュアルゲーマー」にすると矢印が表示されるので、慣れるまでは「カジュアルゲーマー」でプレイしてました。
ただし、「カジュアルゲーマー」だとエイデン操作の移動が一定のポイントに固定されます。自由に動き回りたいなら「コアゲーマー」に変更する必要があります。
プレイ中いつでも難易度変更可能とはいえ、いちいち変えるのは面倒くさかったです。
カメラワークが3D酔いしやすい、操作しにくい
例えば、コンデンサー施設のアクションシーン。
通路を真っすぐ走り抜ける10秒の間にカメラアングルが3回も切り替わり、QTEが入ります。
進行方向にそって方向キー(W)を押し続けているのに、カメラアングルがコロコロ変わると方向キーの方向が分からなくなります。急激に視点が切り替わるので、3D酔いしやすいです。
直線に走り抜けた後は左折(A)する必要があるのに、曲がる直前でカメラアングルが変わるせいでスムーズに方向転換できず、キャラが引っかかってストレスが溜まります。
『ヘビーレイン』では、こうしたアクションシーンの移動は自動だったので、方向キーを押し続ける必要はなく、映像とQTEに集中できました。
列車のアクションシーン。
絶えず画面が左右に揺れまくります。追手と主演俳優の顔を映すため正面アングルから始まり、ドア付近になると背面アングルに変わります。これが2度繰り返されます。プレイヤーにしてみると、列車の進行方向に対して後ろ向きに進んだり、前向きに進んだり、頻繁に変わります。乗り物酔いしやすい方なら分かっていただけると思いますが、ちょっと気持ち悪くなる😫
激しく揺れる列車と主人公をローアングルで映すシーンで、酔いました。すげー揺れる車体しか見えないし、早く終わってほしくて方向キー(W)押し続けてました。
そして、燃える廃アパートから脱出するシーン。
レターボックスにより視野が狭い上にカメラ操作はあまり動かず、狭い室内で人を探しながら逃げ道を探さねばなりません。とても操作しづらかったです。
ジョディ操作ではカメラがあまり動きません。周囲を見渡すには、コアゲーマーモードでエイデン操作に切り替える必要があります。
移動中、進行方向を示すようにカメラアングルが勝手に変わります。「脚本通りに動いてください」と強制されている感覚になりました。
エイデンとジョディを切り替えながら逃げ道を作る所では、1回ごとにカットシーンが入ります。映画のような演出なのですが、カットシーンと操作シーンの切替が分かりにくいです。カットシーンかと思って待っていたら、キャラが棒立ちになって、え?操作するところ?って戸惑いました。
『ヘビーレイン』はそんなことなかったのですが。
全体的に気になった点は、俳優の顔を映すためか急に正面アングルに変わる場面が多いように感じました。アクション映画のようなカメラワークですが、操作しにくくて「これ映画じゃねーんだぞ!」ってイラついてしまいました。
オリジナルモードと時系列モードについて
主人公ジョディの半生を時系列バラバラに体験するのがオリジナルモード。PS3版はオリジナルモードのみだったらしく、PS4版から時系列モードが追加されたようです。
後から追加されたってことは、時系列で体験したいという要望が多かったのでしょうか?
私はオリジナルモードでプレイしましたが、面白かったです。記憶の断片が少しずつ語られるみたいに、細かい部分が省かれていても気にならないですね。
時系列シャッフルのマジック(良い点)
例えば、映画『エターナル・サンシャイン』も時系列バラバラですが、それには大きな理由と伏線がありました。
『BEYOND: Two Souls』は特に大きな理由も伏線もありません。時系列モードで遊んでも全く問題ありません。
だったらなぜ時系列バラバラでも面白いのか、理由をちょっと考えてみました。
インフラワールドと黒い霊体について、ゲーム内で具体的な説明はありません。しかし、プレイヤーは何となく分かっています。
子供時代に黒い霊体に襲われたチャプターの後、青年期に黒い霊体で溢れるコンデンサー施設に行くチャプターが続きます。これらの出来事を通して、たぶんインフラワールドは死の世界のことで、そこの裂け目が開くと霊魂が溢れ出て危険、でもジョディとエイデンなら閉じられるのだろう、と大まかな流れは分かるんですね。
次のチャプターでは、大人になったジョディがホームレスになっており、インフラワールドとは全く別の話に変わります。
どんどん別の話に飛ぶので、1つ1つのエピソードについて深く考えません。でも、何となくは理解できている、「考えるな、感じろ」の時系列シャッフルマジックだと思いました。
主人公の年齢についても、プレイ中は気になりません。これも時系列シャッフルマジックだと思いました。
大人になったジョディがCIAの直属の上司ライアンを自宅に招くチャプターがあります。
他の方のレビューで知ったのですが、この時ジョディ20歳、ライアン33歳らしいんですよ。出会った時はジョディ18歳。年齢差ありますよね。でも、プレイ中はそこまで考えません。
(エイデンがライアンを毛嫌いする理由が少しわかった気がするぞ)
ロマンス相手も、先に登場するのはジェイで、その後にライアンとのエピソードがあります。時系列だと逆で、先にライアンと付き合っていたけど裏切りが発覚して破局し、放浪中にジェイと出会い、CIAに捕まってライアンと再会という流れです。
つまり、ライアンとの関係は一旦終わってるんですね。しかし、ジェイより後に登場するので、プレイヤーにはライアンとの恋の方が印象に残りやすいですよね。これも時系列シャッフルマジックだと思いました。
時系列バラバラの悪い点
主人公ジョディの心の動きが分かりにくいです。
SWAT部隊を壊滅させた後、砂漠でナバホ族の家族と出会いますよね。いい雰囲気っぽかったのに、しばらく滞在するという選択はなかったのでしょうか。やっとの思いで安心して眠れる場所を見つけたのに!あっさり旅立ってしまって拍子抜けしました。
その後、ジョディは母親を探そうと思い立ったようで、DPA(CIA管轄の超常現象研究所)の関連施設に戻るんですね。今まで必死にCIAから逃げて、傷ついて、絶望して、死まで考えたのに、なぜ自ら戻るのでしょうか。そこまでして母親に会おうと決意した理由はなんですか?
ジョディは「ただ会いたいだけ」と説明しています。実の母親を探す理由はそれだけで十分なのかもしれません。しかし、これまで壮絶な逃亡生活をしてきたのに、振り出しに戻るなんてプレイヤーが泣きたくなりましたよ。だって戻ったらCIAに捕まって、また利用されるんだろうなって容易に予想できるじゃないですか。
それと、ネイサンとの関係もよく分かりませんでした。
研究所で生まれ育ったジョディをいつも見守っていたのはネイサンとコールです。コールは信頼できる友人です。ネイサンは父親代わりの存在……なのかどうか、そこんとこ微妙でした。
ネイサンは愛情をもってジョディと接しています。その一方で、まだ10代半ばのジョディをたった1人で危険なコンデンサー施設に送り込んだりしますので、あくまでも研究優先の人です。
そんなネイサンの頼みをジョディも引き受けますので、信頼関係が成り立っていると分かります。
関係が変わったのは、ジョディが強制的にCIA工作員に採用された時でしょうか。ジョディはネイサンが組織に反対してくれなかったのを裏切りだと感じたのでしょうか。それからネイサンとは一線を引いたのかなと感じました。
終盤、ブラックサンの裂け目に向かう途中、銃を持ったネイサンに話しかけられるシーン。選択肢によって分岐しますが、説得した場合、ネイサンは自分の頭を撃ちます。霊体となって家族と再会したネイサンを見て、ジョディは微笑むのです。この一連の流れ、私はショックでした。
目の前で自殺したのですよ。なぜジョディが微笑んでいるのか、私には分かりませんでした。自殺して正気に戻って即家族と再会できて良かったねネイサンって、そんなにすぐ感情を切り替えられませんよ。ジョディにとってネイサンの存在は何だったのですか?色々とひどい。
(説得を試みなかった場合は別の展開になります)
何が一番ひどいって、急に狂って悪役になったネイサンの扱いですよね。霊体になったネイサンが「止められるのは君だけだ」と言うけど、お前がやったんだろ!!!!とツッコミたくなります。結局、ジョディを一番利用していたのはネイサンじゃねーか!?なんというオチだよ……。
霊体エイデンの物語
生まれた時からジョディと霊体エイデンは電気コードみたいに繋がっています。エイデンにも自分の意思があるものの、コミュニケーションできるのは霊感のあるジョディだけ。他の人はエイデンの存在が見えません。
影の主人公はエイデンです。エイデンになりきってプレイできるかどうかでストーリーの評価が変わりそうだなと思いました。
エイデンは霊体なので、壁をすり抜けて移動できます。難易度を「コアゲーマー」にすれば自由に移動できますが、ジョディと繋がっているので彼女の周辺しか行けないという制限はあります。
エイデンの能力は多岐に渡ります。ポルターガイストとか憑依とか、いわゆる幽霊の怪奇現象を起こせるんですね。暴れまくって人を怖がらせたり、脅したりできます。
人の怪我を癒す力もあります。ジョディと協力して透視や亡くなった魂を読むこともできます。ジョディを守る無敵フィールドを一定時間作ることも可能。
エイデンの力は脅威にもなるし、癒しにもなる。
ストーリー前半は、ジョディが可哀想な目にあってエイデンが暴れるというパターンが続きます。途中から先が読めてしまうくらいです。例えば、思春期のジョディが外出したいと言い出すチャプターがありますが、外出先でジョディが可哀想な目になって、エイデンが暴れるんだろうなって予想できてしまいます。
エイデンが暴れる理由は、「ジョディを守りたい」からです。エイデンには明確な意思があることを強調するために、前半は同じパターンが続きます。
幼い頃からジョディが危ない目に遭うとエイデンは傍観していられず、必ず手を出します。そんなエイデンの想いは当然ながら周囲に理解してもらえず、ジョディは危険な存在だとレッテルを貼られてしまいます。エイデンが守ろうとすればするほど、ジョディは孤立してしまうというジレンマが生じます。
そのジレンマはエイデンを操作するプレイヤー自身にのしかかります。見せつけるようにポルタ―ガイスト現象を起こしまくってもいいけど、その分ジョディが偏見に晒されます。ジョディに従順でもいいけど、暴れられなくて手持ち無沙汰なります。プレイヤーの選択に委ねられますが、根底には「ジョディを守りたい」というエイデンの意思があることを忘れないでね!という感じ。
大人になったジョディはCIA工作員に採用され、訓練を積みます。格闘技や銃の扱いなどを身につけたジョディは、自分の身は自分で守れるくらい強くなり、エイデンが手を出す機会は激減。
ジョディとエイデンは凄腕スパイコンビになります。エイデン操作で機密文書を探し出すミッションは、ちょっとした謎解き要素。任務をやり遂げるか失敗するかはプレイヤー次第。
ソマリアでの暗殺ミッションでは、ジョディ1人でろくな装備もなく送り込まれるなんて雑だなぁと思いましたが、エイデンがいれば平気ですよね。エイデンが周辺を索敵したり、敵を排除したり色々できます。ジョディはカバーアクションを駆使して進んでいきます。
ジョディがライアンに好意を寄せると、エイデンはPCを破壊するなどして猛反対。エイデンはライアンを毛嫌いしているものの、ジョディの恋愛を見守るかどうかはプレイヤー次第。
私もライアンはあまり好きではないので、ビビらせて帰ってもらいました。ごめんジョディ😅
(ライアン役の俳優さんは好きです。海外ドラマ『ルーキー』観てます)
凄腕スパイコンビは、CIAから逃亡する際に本領発揮します。
心身共に疲れ果てたジョディは死を考えますが、エイデンがそれを許しません。死ぬこともできず絶望するジョディですが、ホームレスの人たちに助けられます。
お返しにジョディとエイデンの力で助けてあげると、「奇跡だ」と感動されます。今までずっと恐れられていた能力が、初めて感謝された瞬間です。
逃亡生活を続ける中で、ナバホ族の家族と出会います。ジョディとエイデンは儀式の痕跡を見つけ、インフラワールドの裂け目を発見します。霊感の強いジョディと霊体のエイデンだからこそ見つけられたのです(裂け目を閉じるかどうかは選択肢で分岐します)
ジョディがCIAに拘束された時は、コールとライアンに助けを求めました。エイデンにいち早く気づいてくれたのは、意外にもライアンでした。
ディナーの時もエイデンの"はよ帰れアピール"に気づいてくれたもんね……。ライアンとはライバルみたいな関係だったよ。
終盤、生と死の世界の狭間で、エイデンは真実を伝えて消えていきます。
突然訪れた別れのシーンは、少々味気ないものになっています。なぜ今ジョディとの繋がりが切れて離れたのか分かりにくいです。私はエイデンの意思だと受け取りましたが、どうなんでしょう。
別れのシーンが残念だったものの、ジョディが生きる道を選択した場合、エイデンはいつまでも見守っているというエンディングだったのはよかったです。
(ただし、ホームレス達を選んだエンドだとエイデンが出てこない……)
俺たちの戦いはこれからだ!?
全エンディング共通だと思いますが、インフラワールドの裂け目が広がって荒廃した未来の光景で終了します。個人的には蛇足に感じました。
インフラワールドと黒い霊体について、私はシナリオ的に掘り下げる必要がないから説明が省かれているのかと思っていました。ジョディ自身もDPAの研究に無関心で深入りしていませんでしたし、裂け目に向かう時はいつもネイサンに頼まれて行っていました。唯一自発的に裂け目を閉じようとしたのはナバホ族の時ですが、これも分岐により閉じないパターンがあるので、中途半端に終わります。インフラワールドの裂け目は舞台装置みたいなものかと思っていたのに、最後の最後にフォーカスされてビックリしました。
色んな要素が散りばめられているけど、この物語のメインは何なのか分からなくなりました。
まとめ
PS3のゲームとは思えないほど綺麗なグラフィックで、まさにプレイする映画でした。カメラワークと操作性が自分に合わないと感じましたが、全クリ直後は感動しました。
でも、感想を書いているうちに気になる部分が色々と出てきました……。「考えるな、感じろ」系の作品だと思いました。
個人的には『ヘビーレイン』の方が好きですが、霊体を操作する感覚は新鮮で楽しかったです。
セリフ・イベントスキップ機能はありません。他の分岐を見たい場合は、分岐点のチャプターからやり直す必要があり、周回は大変ですね。
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