ゲーム『Rusty Lake』シリーズや『Life Is Strange』『Alan Wake』など、ツイン・ピークスから影響を受けたゲームは色々あります。
そんな伝説的なドラマは一体どんな内容なのか気になったので、U-NEXTで映画版も含めて全話見ました。
事前にレビューを読んだところ、「新シリーズから視聴しても意味がわからないから全部見た方がいい」とあったので、全部見ました!
- シーズン1(1990年)全8話
- シーズン2(1990年ー1991年)全22話
- 映画『ローラ・パーマー最期の7日間』(1992年)
- リミテッド・イベント・シリーズ(シーズン3/2017年)全18話
犯罪捜査系ドラマだと思って視聴すると、第2話からいきなり主人公クーパー捜査官が変な夢を見たりする展開に驚くと思います。スピリチュアル?心霊現象?第六感?超能力?魔法?何と説明すればいいのか分からない、不思議なドラマです。
このドラマのすごい所は、様々な見方・解釈ができることです。考察し始めたら止まりません。考察記事を探したら無限に出てきそうな勢いです。考察記事を読むのが楽しいし、自分なりに考察するのも楽しい。
全話視聴した結果、『Rusty Lake』シリーズで出てくるツイン・ピークスネタが分かるようになりました!やったぜ!
「フクロウは見かけと違う」
⚠以下、ネタバレを含む感想文です!ご注意ください!
二重性
人間の心は複雑怪奇。些細なきっかけで善と悪が変化することもあるし、腹黒かった人がオセロみたいに白にひっくり返ることもあるし、時には矛盾する行動を取る。光が大きければ、影もまた濃くなる。
ツインピークスの群像劇は、人間の二重性を独特なユーモアとシュールさで描写していて、面白かったです。
しかし、シーズン2のラストはみんなが中途半端な状況で終わってしまいます。目が覚めたネイディーン、母の秘密を知ったドナ、頭を打ったベン・ホーン、爆発に巻き込まれたオードリー、蜘蛛が迫るレオ、みんなどうなったんだ!?って状況。
Wikipediaを読んだところ、デヴィット・リンチ監督はシーズン3を製作するつもりだったので、クリフハンガーな締めくくりとなったそうです。
しかし、視聴率低迷による打ち切りのような形で、『ツイン・ピークス』は一旦幕を閉じることになりました。
シーズン2の失速
視聴率低迷について、Wikipediaによると監督と脚本家はローラ事件を中心とした住民たちの群像劇に重点を置いていたのに対し、視聴者の関心はローラ事件の解決に向けられていたそうです。局側の圧力もあったらしく、監督らはシーズン2の途中でローラ事件を解決せざるを得なかったそうです。
そして犯人が明かされて事件解決した途端、視聴者の関心が薄れて視聴率が下がってしまったとか。
言われてみれば、たしかに中途半端なタイミングでローラ事件が解決したなぁと感じました。
犯人の名前自体は早々に明かされていました。第3章の時点で「犯人は"ボブ"」だと出ていました。しかし、"ボブ"の正体に迫るには、常識では考えられない不思議な力の存在を見つける必要があったんです。ローラ事件の謎は想像以上に深かったんです。ツインピークスの森のように深い。
ところが、第13章(シーンズ2)で片腕の男マイクが「ボブは人に憑りついて恐怖と快楽を食らうパラサイトだ」と端的に説明するんです。そっかー憑依霊の類だったのかーって話になります。
第14章でボブが憑りついた人物、すなわちローラ殺害犯が明かされます(この回はデヴィット・リンチが監督)
第16章で犯人(に憑依したボブ)が全て自白し、ローラ事件は解決・終了します。でも、ボブは土壇場で逃亡。
この14章~16章は怒涛の展開で面白かったんですが、肝心のボブは野放しのまま事件が終了してしまうので、消化不良なんです。
事件が解決したらクーパー捜査官はFBIフィラデルフィア支部に帰ることになります。諸悪の根源であるボブと対決することなく、クーパーはツインピークスを去ってしまうんですよ!中途半端じゃないですか!?ボブは放置かよ!って思いましたよ。
ウィンダム・アール編が始まる
第16章でローラ事件が終わり、第17章でクーパーは帰る前にブリッグス少佐と夜釣りに行きます。キャンプ中、少佐は突然「ホワイト・ロッジは知ってるか?」と言い出します。さっそく"ボブ"の謎から離れて、別の話題が始まってしまうんです。これがあんまり面白くない。本気でボブの話はこれで終わりなのか?って思いました。
結局、クーパーは理由をつけられてツインピークスに残る流れになるんですけど。その後でウィンダム・アール編が始まって、クーパーの過去の因縁の話になります。物語の中心がローラ事件からクーパーの過去にシフトしたことで、ボブの謎から遠く離れてしまって、面白くなくなりました。
高校生活を満喫するネイディーン、ベンの南北戦争ごっことか面白いエピソードもあるんですけど。ジェームズと人妻の話だけは早々に飽きて飛ばしちゃいました😅
シーズン2の最後の方になって、ウィンダム・アール編がツインピークスの謎に繋がり、そしてボブの謎にも繋がります。そこからまた一気に面白くなりました!
第25章でフクロウの洞窟を発見した後くらいから、また面白くなります。そこに至るまでの面白くない期間がちょっと長いんですよね……。
令和の時代に視聴した自分としては、もし視聴者と局側の圧が無かったら、本来はどんなシナリオだったんだろうと思って止まないです。映画版も見た後だと強く思います。
今さらこんなこと書いても仕方ないんですけど……。
映画版で再びローラが焦点となる
『ツイン・ピークス』の中心人物を再びローラに戻して、ウィンダム・アール編から途切れてしまった設定を引き戻したのが映画版です。
その弊害として、ローラ事件が解決する前の内容(第16章まで)をしっかり覚えていないと、ついていけないストーリーになってしまっています。
例えば、第1章と第8章でクーパーが言っていたテレサ・バンクス事件とか、第2章でクーパーの夢に出てきたマイクが言った「我々は人間と暮らした。コンビニエンスストアの上に住んだ。言葉通りの意味だ」の話とか、ローラの日記は2冊あったこととか、第5章でジャコビー先生のカウンセリングを受けたボビーが言った「ローラは死にたがってた」の話とか、第9章で登場したトレモンド夫人と孫息子とか。こういった細かい部分まで覚えておかないと。
映画公開時は不評だったらしいです。シーズン1から見直して、やっと理解できるかなぁって内容ですし、この映画だけ見ても意味が分からない難解さです。意味が分からないと、17歳の少女が繰り返し虐待を受け、誰にも相談できず、心身共に追い詰められて、普段の学校生活さえクスリに頼らないとやっていけないほどに堕落していく様を、強烈に見せられる惨い映画としか思えないかも。
原題は『Fire Walk with Me(火よ、我と共に歩め)』となっていますが、個人的には邦題の方が良いと思いました。だって邦題のとおりローラ中心のストーリーですから。ツインピークスの住民達はほとんど出てこないんです。英語教師の生徒ジェシーとか、家庭教師の生徒ジョニー、ジャコビー先生とか、ローラと親交があった住民も出てきません。ツインピークスの群像劇が好きだった人からすると、期待外れだったかもしれません。
シリーズ3で一切出ないウィンダム・アール
シーズン2で一旦幕を閉じた後、25年の歳月を経てシーズン3となるリミテッド・イベント・シリーズがスタ―トしました。
私は旧シリーズから続けて視聴したんですけど、やっぱり真っ先に感じるのは映像が綺麗になったこと!
キャストの方々が25年前と変わってなくて、特にアンディとルーシーの2人が全然変わってなくて、泣きそうになりました。『ツイン・ピークス』の役者さん、演技すごくないですか?キャラクターの特徴とか仕草とか、25年前と変わってない!吹き替えの声優さんも変わっていない!感動!
亡くなってしまった俳優さん・声優さんもいて、本当に悲しくなりました…。私は『ツイン・ピークス』の群像劇が好きだし、住民たちもみんな好きだから。
当然ながらシーズン2の続きからスタートしますが、ウィンダム・アールとアニーの話が不自然すぎるくらい出てきません。アニーは映画版に出ていたこともあり、ホークが一言述べる場面があるんですけど、ウィンダム・アールに関しては一切触れられていないです。
そうなると、ウィンダム・アール関連の設定は有効なのか、それとも無かったことにされているのかが難点になってきます。ただし、シーズン2最終話である第29章はリンチ監督とフロスト氏の脚本なので、第29章で出てきた話は重要だと考えます。それ以外の部分です。
ウィンダム・アール編から登場した用語・設定(第29章以外)
- 1965年、FBIが空軍に出向、ウィンダム・アールはブルーブック計画に携わる
- アールは調査対象を宇宙からツインピークスの森に移したところ、『ブラック・ロッジ』の存在に気づく。この発見に傾倒するあまり暴力的になって解任される
- FBIに戻ったアール、新人だったクーパーの指導役になったが、後に失踪
- ブリッグス少佐はブルーブック計画中止後も非公式に調査を継続していたが、宇宙ではなくツインピークスに『ホワイト・ロッジ』を探していた
- アール曰く、『ホワイト・ロッジ』は善の世界、『ブラック・ロッジ』はその逆。邪悪で恐ろしい力をもった場所
- ホーク曰く、ここの伝説では『ホワイト・ロッジ』は人と自然を支配する精霊の住処と言われている。『ホワイト・ロッジ』の影が『ブラック・ロッジ』で、霊は必ずそこを通って自分自身の影と出会い、悟りに達する。我々は"戸口に住む者"と呼ぶ。勇気なくして『ブラック・ロッジ』に会えば魂が破滅する
- 少佐、閃光の向こうに人影を見た後、2日間失踪。首に▲が組み合わさった痣ができていた。「閃光とフクロウの不吉なイメージが残った」と語った
- 丸太おばさんも昔、森を散歩中に閃光に包まれ、1日失踪したことがある。その時に脚に▲▲の痣ができた。「閃光とフクロウの声を聞いた」と語った
- 少佐曰く、ロッジのドアは恐怖と愛で開く
- クーパー、フクロウの洞窟の壁画からブラック・ロッジの場所とドアが開く時刻を解明。木星と土星が結び合う時
- クーパー「ジョシーが死んだ時、ボブを見た。彼女の恐怖がボブを引き寄せた。ボブはブラック・ロッジから来たんだろう」と推測
上記の設定が、25年後のシーズン3ではどうだったか
- ブルーブック計画にFBIが関わっていた話は出てきたが、ウィンダム・アールの名前は一切出ない
- 『ブラック・ロッジ』は1回言及があっただけで(第2章)、具体的な情報はなし
- 『ホワイト・ロッジ』のことは一切言及なし
- 森の中の閃光と失踪の件は一切出てこない
- ボブはブラック・ロッジの住民かもしれないが、そこから来たわけでなかった。ボブのルーツは第8章で明かされた
というわけで、ウィンダム・アール編で広げた風呂敷はそのまんま放置状態で、あんまり触れられていません。結局『ホワイト・ロッジ/ブラック・ロッジ』の話は何だったんだ?と、ちょっと混乱します。それよりも映画版で出てきた青いバラ事件の話がかなり絡んできますので、アール編の重要度は低くなっています。もう忘れても支障ないレベルでは?
ひとまずアールの話はいいや。それよりボブの謎が中途半端に放置されていましたよね。まずはそっちを解明してほしいと思っていたところ、シーズン3でついにボブの謎が明かされるんです!やっとスッキリします!これですよ、知りたかったのは!
ローラ事件がやっと決着したと思えて、よかったです。
謎は残っている
ボブの件が解決して区切りはつきましたが、それで終わりではありません。まだまだ謎は残っています。
もしかしたら……もしかしたらシーズン4がくるかもしれないので、残った謎について別記事に書いておこうと思います。忘れないように。
色々な考察記事を読むのも楽しいのですが、『ツイン・ピークス』は謎を謎のまま楽しむのもいいと思いました。
ローラ事件の犯人は誰かって、そこは重要ではなかった。
謎のままの方が面白い場合もあるんだなぁと思いました。
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